尿失禁とは文字通り、自分の意志とは無関係に尿が漏れてしまうことです。老若男女を問わず起こりえますが、ここでは特に成年女性の尿失禁に的を絞ってお話しさせていただきます。
尿失禁を自覚している成人女性は実は非常に多く、極めてありふれた病態であるということがわかってきています。もちろん症状の重い・軽いはあり、咳やくしゃみをしたときにごく少量だけ漏れてしまうというものから体を動かすと膀胱内の尿が全て漏れてしまうといったものまで存在します。恥ずかしさもあり、またある程度は仕方ないと諦めてしまう方が多くこれまであまり目立つことはなかった病態ではありますが、近年この分野に対する注目と泌尿器科学の進歩は著しいものがあります。
女性の場合、出産もあり骨盤底筋群とよばれる骨盤の底部にある筋肉群が引き伸ばされたり傷んだりしやすいといわれています。骨盤底筋群の中にはおしっこを我慢させる尿道括約筋も含まれていますので出産を経験した女性ではとりわけ尿失禁が生じやすくなります。また子宮は膀胱に乗りかかるように存在しており、このために膀胱が下方へ押し付けられるような格好となっていますが、膀胱が下垂すると尿道・尿道括約筋機能不全を招来させるといわれています。さらに出産の有無にかかわらず靭帯とよばれる内臓を支える構造物が加齢とともに弱くなってくるために膀胱を含めた内臓が全体的に下垂し、尿道・尿道括約筋機能不全に拍車をかけることとなります。尿道・尿道括約筋機能不全が起こると尿失禁が発生してきます。
最近ではさまざまな治療の選択肢が出てきました。効率良く骨盤底筋群をきたえる体操・薬物療法・手術療法などの方法がありますが、尿失禁の程度・全身状態に応じて最適となる治療法を選択することとなります。先にも述べましたが近年尿失禁の治療方法・治療成績は飛躍的に向上してきておりますので恥ずかしがることなく専門家の診察を受けられることを是非お勧めします。